【読んだ本】東京に住むならどこ?必読!『東京どこに住む?-住所格差と人生格差』速水健朗

東京どこに住む? 住所格差と人生格差 (朝日新書)
速水健朗 朝日新聞出版 2016-05-13
売り上げランキング : 8735

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by ヨメレバ

内容(「BOOK」データベースより)


東京に変化が起こっている。それは、住む場所に対する人の考え方が変わってきているからだ。家賃が高くても都心に住む人々は、どのようなメリットを見いだしているのか?かつての人気の街は、なぜ衰退したのか?どこに住むかの重要性がかつてなく高まっている時代の、都市暮らしの最新ルールを探る。

Contents -目次-

都心のど真ん中を目指す人が増加している

yellowmagics9 / Pixabay

とても面白い本でした!読んでよかったです。
豊富なデータを元に、主に2000年以降の東京23区での人々の動きの実態を掴めます。今、東京内でどの地域に人気があり人が集まっていて、どの地域から逆に人が離れて行っているのか。またそういう動向が見られる要因は何なのか?それを鋭く解き明かしていくのが本書です。

これから引越しを考えている人も参考にすべきですし、東京に住んでいる人なら間違い無く、誰でも興味深く読むことができる本だと思います。自分たちのまさに住んでいる場所の話ですからね。とても興味深いです。

今、人気のエリア、魅力を感じる地域は私個人の感覚とも一致していました。

都心に住むのって憧れますよね。それも千代田区、港区、中央区など、東京のど真ん中のエリアにここ最近では、以前にも増して魅力を感じます。あのあたりに行くと分かりますが、ここ最近では特に、何とも言えないエネルギーを放っているような、そんな感じなんですよね。何かが起こりそう、という感じ。

そんな個人的なイメージはまあさておき、同書のデータによると、23区内で見た場合ここ最近の傾向としても、実際に人口増加率が高いのは千代田区、中央区、港区なんだそうです。

本の帯には、「かつては西高東低、今は逆!」と大きく掲げられていますが、現在では人口増加率が高い地域は、前述の3区をトップとして、東側の区から西側の区へとランクインされていくそうです。

また2030年までに人口増加が見込まれる地域の上位5位は、千代田区、文京区、中央区、港区、江東区なのだそうです。

でも不思議ですよね。あのあたりって、東京でも飛び抜けて家賃や生活費が高い地域ですよね。それにもかかわらず、高コストな都心生活を見直す人々が集まって来たのは何故なのでしょう。著者の速水健朗さんはこう問うています。

家賃が高く、誰もが住めるわけではない港区に住む人たちは、お金が有り余っているから、または単にみえっぱりだからそこに住んでいるわけではない。家賃と釣り合うだけの条件を都心に見出し、享受しているからそこに住んでいるのだ。『住んで得する街ランキング首都圏版』(枻出版社)を参考に1LDKの家賃相場の比較を行ってみると、港区は20.5万円で最高値。足立区、葛飾区が23区最安値で7.8万円と大きな差がついている。足立区に住む場合と比べて、2.6倍も高い家賃を払うことのメリットは何だろう?

とても興味深く魅力的な問題提起です!上記の問題を的確に理解するのは、とても意義のあることだと思いますし、これからの流れを考えると、ますます重要になるのではないかと思います。

(それにしても東京というのはすごい場所です。地方出身の私から見ると、区単位のこんな近距離で雰囲気や、家賃、生活水準まで劇的に変わってしまうというのは驚くばかりです。)

都心に住むことのメリット、デメリットを理解することの意義

fancycrave1 / Pixabay

さて、一度同書のポイントをおさらいします。

なんとなく賑やかなところが好き、とか逆に静かな方がいいとか、センスがいいとか、悪いとか、住む場所に対しての好みにはいろいろあると思いますが、この本で明らかにされたのは、家賃などの生活にかかるコストが高くても、あえて都心に住む人が増えているという事実、そしてそこには大きなメリットが存在する、ということです。

以前であれば、基本的に収入に応じた身分相応な場所を選ぶのが、一般的な考え方でした。しかし、近年では考え方が少し変わってきて、都心に住むことでかかる高いコスト以上の価値を多くの人々が意識的、無意識的に見出すようになっており、だからこそ実際に人々は移動をしている。人々が見出した新たな価値観が、住むこと、住む場所への捉え方に今後大きな変化をもたらすのかもしれません。いや、むしろ今実際に変化もたらしている真っ只中と言えるでしょう。

漠然と住む場所を決めるのではなく、今までとは少し違う考え方で、住む場所によって得られるメリット、デメリットを正確に理解すること。そのことにより、以前よりも的確な選択が可能になるはずです。自分の望むものを手に入れるためにはどういう選択肢があるのか。そしてその選択の結果がもたらすメリット、デメリットの予測は意思決定に大きな影響を与えます。

住む場所というのをそもそも選択する、あるいは変える、というのは簡単なことではありません。中には簡単な人もいるかもしれませんが、体一つだけではなく、様々なものが移動しなければならないわけですから、大きなエネルギーを必要とすることには違いありません。

「住めば都」という諺があるくらいで、どこでも実際住んでみれば人は楽しくやっていけるというのも真実かもしれません。

しかし『東京どこに住む?-住所格差と人生格差』で考察され、解き明かされた、高い家賃とトレードオフで都心に住むことのメリットの享受、あるいはそれを分かった上での放棄という選択肢まで含める。このことを念頭におくと、新たな、そしてより有意義な意思決定ができるに違いありません。

生活に関わる高コストとトレードオフでメリットを享受するか、あるいはそのメリットをあえて無視するか。
『東京どこに住む?-住所格差と人生格差』を読んでおけば、「のんびりした郊外に惹かれてきたけど何だか違うなー」と漠然と違和感を感じたり、逆に「都会の喧騒に囲まれて暮らしたい、と思って引っ越したけど息苦しい、、、」などというミスマッチは少なくなるのではと思います。

例)都心に住むことのメリットって?

さて、『東京どこに住む?-住所格差と人生格差』では都心に住むことの驚くべきメリットの可能性の一つに『頭が良くなる』ということが挙げられています。

にわかには信じがたいですよね。でも確かに納得できなくはない話だと思いました。その理由は端的に言えば「都会であればあるほど、人との接触が増えるから」ということです。人口が多い場所は知っている人、知らない人にかかわらず、そうでない場所に比べて絶対的に人との接触は多いはずです。人々が互いに接触すれば、情報の量や、ひらめき、発見の機会が自然に増えるのは考えてみれば当然です。

これはほんの一例で他にも、可能性として様々なメリットが考察されていますが、どれも高コストを補って余りある魅力だと感じました。高いコストを払って都心に住むことに、例えばこういったメリットがあるとして、それをどう天秤にかけるか、というのが本書の有意義な捉え方の一つだ思います。

詳しい内容は、実際に同著を手にとって読んでいただくことをお勧めします。

また、私がこの本で、(素人)経済学の視点から面白いな、と感じたのは「外部性」という話でした。外部性についてはまた別の機会にまとめたいと考えていますが、そう言った切り口からもとても楽しく読める本でした。おすすめです。

東京どこに住む? 住所格差と人生格差 (朝日新書)
速水健朗 朝日新聞出版 2016-05-13
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