日本の貧困の原因って何?東洋経済オンライン『月収13万円、37歳女性を苦しめる〜』の記事を読んで思った事

Contents -目次-

これじゃ片手落ちでは?経済にはミクロとマクロがある

たまたま目にしたこちらの記事。

※クリックすると別ページで開きます。
東洋経済オンライン『月収13万円、37歳女性を苦しめる「官製貧困」』
http://toyokeizai.net/articles/-/134801?page=4

この手の記事はよく目にするし、事態は深刻だし、他人事ではないし、記事中の女性には幸せになってほしいし、確かに世の中の制度も悪い。

でも、こういう記事や、テレビの特集などを目にするといつも疑問を感じてしまう。
率直に言って、片手落ちにしか思えない。

経済にはミクロとマクロがある。

記事中の女性の置かれた状況、相対的な貧困の問題は、換言すれば雇用の問題ですよね。
雇用の問題を扱うのにマクロ経済の視点からの言及が全くないっていうのはどういうことなのでしょうか。

マクロ経済の視点からの言及が記事にも、コメントにも皆無なのがある種、現在の日本の雇用に関する、望ましくない状況を許してしまっている一因のように思えてなりません。
世の中不況で厳しいし、いい仕事はなかなかないし将来も不安です。

もちろん個々のミクロな事情は山ほどあるし、世の中の仕組みが悪いし、個人の努力が足りない部分もあるでしょう。そのことを軽視するわけではありません。ミクロで改善すべき所は当然改善していくべきですし、この記事のように、問題点は特集され取り上げられ人々に知られるべきです。また個人レベルで、例えば記事中の女性も、現状の経済状況をもっとシビアに見据えていれば、もしかしたらもう少しいい選択がありえたかもしれません。

しかし、その悪い世の中の仕組みや出来事が、悪は完全に無くならないにせよ、相対的に過度に存在する事を可能にしている、根源的で最も大きな原因は、現在の日本においては間違いなくデフレです。

最も大きな原因というのが言い過ぎであるならば、だとしても、少なくとも、マクロの視点はもう少し積極的に取り上げ、考慮すべき問題の一つであることには疑問の余地はないと思います。

stevepb / Pixabay

不況の原因はデフレ

もう一度言いますが、不況の根源的で最も大きな原因は、現在の日本においては間違いなくデフレです。

デフレは貨幣現象でありマクロ経済の範疇です。雇用やその環境に関する政策もマクロ経済の扱う分野です。

個々のミクロな視点の問題と、改善すべき点も山ほどある事は否定しません。しかし、貧困の増加や、生活が苦しい人が相対的に多い事の根源的な原因を問うツールはマクロ経済の範疇にあります。

そこを抜きにして議論する事は、今後はますます空論以下の雑音でしかなくなっていくのではないでしょうか。

適切な視点をもった若者がより増えていく事が現状では最も期待できる改善のシナリオでしょうか。

なぜ生活が苦しいか。賃金が低いから。なぜ賃金が低く、上がらないか?不景気だから。なぜ不景気か?経済政策が正しく行われてこなかったから。
不景気になるような金融政策、財政政策をずっと続けていたから、当然不景気になっているにすぎません。

答えは出ているように思えます。

経済システムとか、世の中の仕組みが悪いからとか、自分のキャリアの見通しが甘かったとか、好きな仕事だからそれでも仕方ないとか、もちろんミクロには色々ありますが、根本を全部抜かしてる。少なくとも片手落ちではないでしょうか。

なぜ経済システムが悪いのか?なぜキャリアの見通しが甘く一度レールから外れると極端に厳しい生活を強いられてしまうのか?なぜ好きな仕事を選ぶと生活すら苦しくなってしまう人がいるのか?

極端に景気が悪いからですよね。もう少し正確に言えばデフレが続いているから。ある意味、すごく簡単な話だと思います。

もう少し生きる事って楽でいいんじゃないかと思いません?

Takmeomeo / Pixabay

デフレをなくすには

デフレをなくすにはどうするか?中央銀行がお金を適正なインフレ率に収まるように刷ればいいです。インフレターゲットというやつですね。

アベノミクスは金融政策でそれをやったから、当然失業率が改善しました。フィリップスカーブで知られるように、「インフレになると短期的に失業率が改善する」これはりんごが木から落ちる、というのと同じくらい普遍的な話しですよね。お金を刷り、インフレ率を上げていくと失業率が改善していく。そしてついに失業率が底まで下がると人手不足になる。そうなると企業はどうやって人手を確保するでしょうか?給与面や待遇で人を確保せざるを得なくなると思います。ここまで来れば、状況は改善してくるでしょう。

それを今までやって来なかったので20年以上不況だったわけで。

では、今度はアベノミクスやったのに景気は良くならないじゃないか、という人もたくさんいますが、まず感覚的な話しでアレですが、20年も続いた不景気がいきなり良くなるとはあまり思えません。また失業率が改善しても非正規が問題だ、という人もいますが、失業率が改善したという事は、働きたくても仕事がなかった人が、仕事に就けた。という事です。失業率が高いままだとただの無職です。非正規でも職があるのと、無職とどちらがよりマシかは個人の価値観にお任せしますが、私には無職よりはるかにマシに思えます。さらに大事なのは、インフレターゲット政策を続けて、失業率がもうこれ以上下がらない、という構造失業率まで達すると雇用環境も改善していくということです。

また政府がアベノミクス、とパッケージングするから混乱を招くのかもしれません。一度「アベノミクス」を抜きにして、個々の政策で考えてみる必要があると思います。

・金融政策は良かった。 (大胆な金融政策)
・財政政策は消費増税で最悪。(機動的な財政出動)
・成長戦略?そんなのありましたっけ?(成長戦略)

それらの差し引きの結果が現在です。金融政策は最も雇用の改善に寄与する政策なので失業率が当然改善している。

消費増税で消費を落ち込ませるので景気が落ちこみなかなか良くならない。

まさに今の現状です。

大事なのは、普通の人が普通の努力をして普通の暮らしが出来る世の中に近づけること。

それを可能にするために、現在において、最も適正な政策は金融緩和と、可能な限りの減税です。増税で落ち込んだ民間需要を喚起する必要があると思います。

私たちにできること。オススメのテキスト。

世の中不況で厳しいし、いい仕事はなかなかないし将来も不安です。

でもそういうのって、多くの人々の適切なマクロ経済への理解の不足も、巡り巡って連環的に貧困の増加、不況の継続を許している一因ともなっているのではないでしょうか。

民主主義ですから、多くの人々が適切な知識を持って、適切な政策を望めば自然と世の中は良くなっていくでしょう。そうならないのは、もちろん政治は良くはないけど、政治が悪いのは、半分は世の中の人々の責任もあるわけで。
政治家は我々民衆の代表ですから、民衆の質が平均的に高ければ、そこから選ばれる人は平均的に質の高い人になっていくのではないでしょうか。

というわけで、有用なマクロ経済学の知識を、私もさらにもっと知識を深める必要がありますが、私だけでなく多くの人々にも知ってもらえたらなあ、と思います。

以下のマンキュー先生の経済学のテキストは米国で標準的な経済学の教科書として有名です。

難しい数式は全く出てこず、経済学のさまざまなトピックの、最も大事な概念や根幹の考え方を豊富な実例を交えてとてもわかりやすく学べます。同書で取り上げられているさまざまなトピックは本当に目から鱗の話題でいっぱいです。

なぜ人々は互いに取引をするのか?世の中の価格はどうやって決まるのか?人々が豊かな暮らしをするためには、政府はどういう政策が打てるのか?..etc
大変、有用な知見が盛りだくさんです。個人的にはこのテキストを義務教育にも取り入れるべきだと思っています。

大事なのは、経済学は世の中を理解する道具の一つ、だということです。

経済というと、まやかしだ、とか、金儲けだ、金持ちだけが得をするとか、毛嫌いする人もいますが、先入観、誤解、常識にとらわれていてはもったいないです。

経済学に関してのさまざまなトピックは、頭のいい人が、一生懸命考えに考え抜いて、発見した、人類にとって有用な知見の集積です。

我々の人生をより豊かにするための道具の一つです。世の中を見るための、できる限り適切な視点を持ちたいものですね。


初心者にはまずこちらがおすすめ!少し古いですが内容は普遍的に有用なものばかり。ミクロ、マクロの重要なトピックをコンパクトにまとめてあります。

マンキュー入門経済学
N.グレゴリー マンキュー 東洋経済新報社 2008-03
売り上げランキング : 38958

by ヨメレバ

私はマクロ経済についてもう少し知りたかったので、こちらの、入門編に続いてマクロ編を思い切って買いました。失業、雇用の問題、金融、、、本当に素晴らしい知見がたくさん掲載されています。ぜひ。

マンキュー経済学 II マクロ編(第3版)
N.グレゴリー マンキュー 東洋経済新報社 2014-03-07
売り上げランキング : 33391

by ヨメレバ

トップへ戻る